茨城大学農学部食生命科学科 坂上研究室

農学部茨城大学

研究の概要 Overview of Our Research

当研究室では,農業生産の基盤であり,物質循環の核となる“土壌”の視点を活かしながら,土壌,微生物,植物,そして動物(人間を含む)の連環に着目して,人間と自然の共生システムに関する多様な研究の展開を目指しています。研究分野は,概ね以下のとおりです。
●土壌生態系をとりまく自然環境の動態に関する分野
植生回復や環境保全,土壌生成過程の解明に関する研究
外生菌根菌が形成した菌核の分布や生態に関する研究
●土壌の持続的利用と物質循環に関する分野
土壌-微生物-植物の連環と無機物質循環に関する研究(農産物などの食品を含む)
有機農業と物質循環(無機元素の動態や腐植集積など)との関係に関する研究
●熱帯地域における農業の持続可能性に関する分野
熱帯農業と物質循環(炭素蓄積や土壌の風化など)に関する研究
熱帯地域における農産物の性状と流通に関する研究

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研究テーマ

駒止湿原開墾跡地におけるブナ林再生に関する研究

福島県の駒止湿原は,1950年代に周辺地域が開拓地として開墾され,抜根・整地のためにブナ林下の表層土壌(A層)が失われました。湿原が天然記念物に指定された1970年以降,農地からの土砂流入が湿原の生態系に影響を与えていることが指摘されると,2000年までに集水域全体が天然記念物として追加指定されました。開拓農地跡は裸地化し,2000年よりブナ林復元事業が実施されているものの,植樹ブナの生育が不良な地域が認められます。
そこで,ブナ二次林から耕作放棄地にかけて土壌・植生環境調査を行い,植生の回復と土壌生成との関係を探っています。また,現地ブナの共生菌類を調査し,ブナ稚樹への接種および植樹試験も行っています。


三宅島における植生回復と土壌生成に関する研究

本学の太田学長や農学部食生命科学科の西澤准教授は,これまで筑波大学の研究グループと協働して,三宅島2000年噴火火山灰堆積物を対象として初成土壌生成プロセスにおける微生物の役割を探ってきました。
当研究室も三宅研究に参画し,土壌生成によって土壌の一般理化学性がどのように変化してきたか,分析をおこなっています。これまでは無機元素の動態に興味を持ってきましたが,腐植集積など有機物の動態についても研究していきたいと思っています。


作物栽培における共生微生物の利用に関する研究

食生命科学科の成澤教授が地域総合農学科の小松崎教授,浅木准教授らと連携して進めているDSE研究に関わっています。
農学部附属国際フィールド農学センター(iFC)では,成澤研の野口研究員やiFCの松浦助教が中心となり,共生菌を定着させたトマトの栽培試験を実施しています。当研究室では,共生菌接種が及ぼす土壌の一般理化学性およびトマトの生育への影響を明らかとするため,栽培土壌中の栄養塩類の存在形態や果実収量,糖酸比,トマト植物体における元素分配等の調査をおこなっています。

また,成澤教授が中心となって実施する「露地栽培農産物のチャレンジ実証プロジェクト」として,テンサイに共生微生物を接種して,茨城町において栽培を試みる取り組みにも参加しています。北海道が生育の南限となるテンサイが茨城町で栽培できるとなれば,温暖化適応が可能となります。また,茨城県で栽培されていない新たな作物が栽培できると農業はもとより,食文化,販売,流通に対しても大きな影響を及ぼす可能性が考えられます。具体的には,共生微生物を接種したテンサイを栽培し,期間中の土壌性状の変化を把握し,気候値や収量等と併せて評価をおこなっていく予定です。


有機農業の実践と土壌性状に関する研究

地域総合農学科の小松崎教授,浅木准教授,西脇准教授らとともに茨城県内の有機農業の取り組みの拡大を目指し,有機栽培圃場の土壌を総合的に評価する手法を開発する取り組みに参加しています。
このプロジェクトでは,①土壌の物理性,化学性と作物の収量との関係解析(有機圃場土壌の総合性評価手法の開発をめざして,調査圃場の土壌の物理性や化学性を中心に調査し,作物の収量や品質との関係を解析)と,②イタリアンライグラスやオオムギを緑肥利用した作物栽培技術に関する調査研究(イネやサツマイモ栽培において,緑肥を利用することが土壌の物理性や化学性と作物の収量に及ぼす影響を解析)に取り組んでおり,土壌の一般理化学性分析(特に土壌炭素の蓄積等)を通して寄与していく予定です。


緑地土壌の機能や環境動態に関する研究

緑地の基盤となる土壌は貴重な国土資源です。その環境保全機能について,農林水産技術会議事務局(1990)は,水かん養機能,洪水防止機能,水質浄化機能,土砂崩壊防止機能,土壌侵食防止機能,汚染物浄化機能,居住快適性機能,保健休養機能であるとし,人々の生活との関係を前提とした役割も重要であることを明記しています。
当研究室では,理学部の及川准教授や工学部の榎本准教授,農学部の高瀬講師らが推進するクズプロジェクトに参画し,高速道路法面土壌におけるクズの繁茂がおよぼす土壌の一般理化学性への影響について調査しています。
また,都市公園など多様な緑地を対象として,緑地土壌における物質循環や炭素隔離について知見を集めていきたいと考えています。


熱帯地域における有機農業の実践に関する研究

インドネシアでは,有機農産物に対する安全性や健康志向が高まり,有機栽培米の需要が高くなっています。当研究室では,これまでインドネシアのバリ島において,有機農法を実践する圃場および慣行農法を継続する圃場における稲の生育状況および土壌有機物の分解挙動に関する調査をおこないました。有機農業の実践により短期間であっても易分解性有機物と難分解性有機物の分解・蓄積にわずかな変化が見られ,有機農業の実践により難分解性土壌有機物の蓄積が促進される可能性が考えられました。インドネシア国内の他の圃場でも有機農業の実践年数が異なる水田の表土を採取するなどしており,熱帯における有機農業の実践と土壌性状の関係について,機会があれば総合的にアプローチしていきたいと考えています。


その他の研究テーマ

現在のところ活発に取り組んでいるわけではありませんが,微生物による土壌鉱物の生物風化と肥沃度の変化や,市場で流通している野菜の元素組成と産地土壌の理化学性との関係(あるいはご当地野菜の比較等?),作物栽培体系における物質循環の見える化(?),亜熱帯土壌における外生菌根菌Cenococcum geophilumが形成した菌核の分布と規定要因などにも興味を持っています。
上記以外にも,当研究室で対応可能な研究内容であれば,新しいテーマにどんどん挑戦していきますので,興味がありましたらご相談ください!

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研究の方法

当研究室で用いる研究の方法は,以下の通りです。いずれの場合においても,一部専門外の部分は学内外の研究者と協力して実施します。

フィールドワーク

土壌調査(土壌断面記載),植生調査,生育調査,収量調査,気候観測,土壌硬度分布,透水性試験,微地形計測等

土壌の物理性に関わる実験

三相分布,粒度分析,保水性等

土壌の化学性に関わる実験

土壌pH,水溶性・交換性陽イオン,可給態リン酸,全炭素・全窒素含量,硝酸態・アンモニア態窒素含量,腐植分析,選択溶解法,無機元素組成等

土壌の生物性に関わる実験

微生物分析に関しては西澤研・成澤研と完全協力(依存)で実施します。
土壌動物に関しては他機関研究者と連携可能かも知れません。

その他元素分析等

植物,食品試料の成分分析等

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主な設備機器等

pH・EC計 ICP発光分光分析装置(共通機器) 原子吸光光度計(共通機器)
土壌のpHや電気伝導度の測定に使用します。 複数元素の同時分析に大活躍です。
Ar消費量が…
溶液分析の王道!

蛍光X線元素分析装置 酸循環分解システム 紫外可視分光光度計
(太田・西澤研所有)
固体試料の半定量元素分析に便利! 酸循環分解容器を用いて効率的な酸分解! 吸収スペクトルも得られます!

CNコーダー(共通機器) CHNコーダー(共通機器) TOC計(太田・西澤研所有)
土壌や植物試料の全炭素・全窒素含量測定に
多用します。ヘリウムが足りない…
こちらは少し古いタイプですが,優れた
分析装置です。
土壌の有機体炭素を測定できます。
今は機器調整中です。

マッフル炉 デジタルマイクロスコープ 恒温槽
950℃程度まで昇温可能な小型の電気炉です。 試料の表面形状等を観察できます。相当古い
一品ですが,全然,使えます。
恒温槽は3台用意しています。でも小型です。

マイクロ天秤(西澤研から拝借) デジタル三相計 データ・ロガー
0.01mgまで秤量可能です。 100ccコアで採取した土壌の気相を自動で
測定できます。
温度とりや土壌水分計を接続して,野外や室内で
観測データを記録します。

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