茨城大学農学部食生命科学科 坂上研究室

農学部茨城大学

研究の概要 Overview of Our Research

土壌は作物生産の基盤となる貴重な農業資源であるとともに,物質循環の核となる環境資源でもあります。当研究室では,土壌学や環境科学の研究手法を基本としながら,土壌と植物や微生物,そして動物(人間を含む)との連環に着目した学際的な研究展開を目指しています。研究分野は,概ね以下のとおりです。
Soil is an essential resource for agriculture as a foundation for crop production, and it is also an environmental resource as the core of material cycles. Our laboratory aims to develop interdisciplinary research focusing on the linkage between soil, plants, microorganisms, and animals (including humans), based on the research techniques of soil and environmental sciences.
●土壌の持続的利用や土壌を介した物質循環に関する分野
Fields related to sustainable use of soil and material cycles through soil body

有機農業の実践と物質循環(無機元素の循環や土壌有機物の動態など)に関する研究
Research on organic farming practices and material cycles (e.g., cycles of inorganic elements, dynamics of soil organic matter)
土壌の農業利用と土壌-微生物-植物の連環に関する研究(農産物などの食品を含む)
Research on agricultural use of soil and soil-microbe-plant linkages (including agricultural and food products)
●自然環境の動態や土壌生態系に関する分野
Fields related to the dynamics of the natural environment and soil ecosystems

植物や微生物の生態と自然に生成する土壌(人為影響下を含む)の特性に関する研究
Research on plant and microbial ecology and the characteristics of naturally developping soils (including anthropogenic soil)
植生回復や環境保全における土壌の生成・風化に関する研究
Research on soil genesis and weathering under processes of vegetation recovery and environmental conservation
●熱帯農業の特性と土壌の持続可能性に関する分野
Fields related to the characteristics of tropical agriculture and tropical soil sustainability

熱帯地域における農産物の性状や土壌を介した物質循環に関する研究
Research on properties of agricultural products in tropics and material cycles through tropical soil
熱帯農業と物質循環(炭素蓄積や土壌の風化など)に関する研究
Research on tropical agriculture and material cycles (e.g. carbon accumulation, soil weathering)

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研究テーマ

有機農業の実践と土壌性状に関する研究

地域総合農学科の小松崎教授,浅木准教授らとともに茨城県内の有機農業の取り組みの拡大を目指し,有機栽培圃場の土壌を総合的に評価する手法を開発する取り組みに参加しています。
このプロジェクトでは,土壌の物理性,化学性と作物の収量との関係解析や緑肥作物の栽培技術に関する調査研究に取り組んでおり,有機農業を実践することで土壌の一般理化学性にどのような変化が生じるか,特に土壌炭素蓄積の観点から研究を進めています。


作物栽培における共生微生物の利用と土壌性状に関する研究

食生命科学科の成澤教授が地域総合農学科の小松崎教授,浅木准教授らと連携して進めているDSE研究に部分的に参加しています。
成澤教授が中心となって実施するテンサイプロジェクトでは,テンサイに共生微生物を接種して,茨城県内や愛知県など温暖な地域での栽培に挑戦しています。北海道でしか栽培されないテンサイですが,気候変動の影響を受けて生産量の低下が懸念されており,温暖化適応が急務となっています。


緑地土壌の機能や環境動態に関する研究

緑地の基盤となる土壌は貴重な国土資源です。当研究室では,理学部の及川准教授や工学部の榎本准教授,農学部の高瀬准教授らが推進するクズプロジェクトに参画し,高速道路法面土壌におけるクズの繁茂がおよぼす土壌の一般理化学性への影響について調査しています。
また,都市公園など多様な緑地を対象として,緑地土壌における物質循環や炭素隔離について知見を集めていきたいと考えています。


三宅島における植生回復と土壌生成に関する研究

本学の太田学長や農学部食生命科学科の西澤准教授は,これまで筑波大学の研究グループと協働して,三宅島2000年噴火火山灰堆積物を対象として初成土壌生成プロセスにおける微生物の役割を探ってきました。当研究室も三宅研究に参画し,土壌の風化や腐植集積など,有機・無機物質の循環についても研究を進めています。


駒止湿原開墾跡地におけるブナ林再生と土壌性状に関する研究

福島県の駒止湿原は,1950年代に周辺地域が開拓地として開墾され,抜根・整地のためにブナ林下の表層土壌(A層)が失われました。湿原が天然記念物に指定された1970年以降,農地からの土砂流入が湿原の生態系に影響を与えていることが指摘されると,2000年までに集水域全体が天然記念物として追加指定されました。開拓農地跡は裸地化し,2000年よりブナ林復元事業が実施されているものの,植樹ブナの生育が不良な地域が認められます。 そこで,ブナ二次林から耕作放棄地にかけて土壌・植生環境調査を行い,植生の回復と土壌生成との関係を探っています。また,現地ブナの共生菌類を調査し,ブナ稚樹への接種および植樹試験も行っています。


熱帯地域における有機農業の実践に関する研究

インドネシアでは,有機農産物に対する安全性や健康志向が高まり,有機栽培米の需要が高くなっています。当研究室では,これまでインドネシアのバリ島において,有機農法を実践する圃場および慣行農法を継続する圃場における稲の生育状況および土壌有機物の分解挙動に関する調査をおこないました。有機農業の実践により短期間であっても易分解性有機物と難分解性有機物の分解・蓄積にわずかな変化が見られ,有機農業の実践により難分解性土壌有機物の蓄積が促進される可能性が考えられました。インドネシア国内の他の圃場でも有機農業の実践年数が異なる水田の表土を採取するなどしており,熱帯における有機農業の実践と土壌性状の関係について,機会があれば総合的にアプローチしていきたいと考えています。


その他の研究テーマ

現在のところ活発に取り組んでいるわけではありませんが,微生物による土壌鉱物の生物風化と肥沃度の変化や,市場で流通している野菜の元素組成と産地土壌の理化学性との関係(あるいはご当地野菜の比較等?),作物栽培体系における物質循環の見える化(?),亜熱帯土壌における外生菌根菌が形成した菌核の分布と規定要因などにも興味を持っています。
上記以外にも,当研究室で対応可能な研究内容であれば,新しいテーマにどんどん挑戦していきますので,興味がありましたらご相談ください!

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研究の方法

当研究室で用いる研究の方法は,以下の通りです。いずれの場合においても,一部専門外の部分は学内外の研究者と協力して実施します。

フィールドワーク

土壌調査(土壌断面記載),植生調査,生育調査,収量調査,気候観測,土壌硬度分布,透水性試験,微地形計測等

土壌の物理性に関わる実験

三相分布,粒度分析,保水性等

土壌の化学性に関わる実験

土壌pH,水溶性・交換性陽イオン,可給態リン酸,全炭素・全窒素含量,硝酸態・アンモニア態窒素含量,腐植分析,選択溶解法,無機元素組成等

土壌の生物性に関わる実験

微生物分析に関しては西澤研・成澤研と完全協力(依存)で実施します。
土壌動物に関しては他機関研究者と連携可能かも知れません。

その他元素分析等

植物,食品試料の成分分析等

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主な設備機器等

pH・EC計 ICP発光分光分析装置(共通機器) 原子吸光光度計(共通機器)
土壌のpHや電気伝導度の測定に使用します。 複数元素の同時分析に大活躍です。
Ar消費量が…
溶液分析の王道!

蛍光X線元素分析装置 酸循環分解システム 紫外可視分光光度計
(太田・西澤研所有)
固体試料の半定量元素分析に便利! 酸循環分解容器を用いて効率的な酸分解! 吸収スペクトルも得られます!

CNコーダー(共通機器) CHNコーダー(共通機器) TOC計(太田・西澤研所有)
土壌や植物試料の全炭素・全窒素含量測定に
多用します。ヘリウムが足りない…
こちらは少し古いタイプですが,優れた
分析装置です。
土壌の有機態炭素を測定できます。
今は機器調整中です。

マッフル炉 デジタルマイクロスコープ 恒温槽
950℃程度まで昇温可能な小型の電気炉です。 試料の表面形状等を観察できます。相当古い
一品ですが,全然,使えます。
恒温槽は3台用意しています。でも小型です。

マイクロ天秤(西澤研から拝借) デジタル三相計 データ・ロガー
0.01mgまで秤量可能です。 100ccコアで採取した土壌の気相を自動で
測定できます。
温度とりや土壌水分計を接続して,野外や室内で
観測データを記録します。

デジタル貫入硬度計(頂き物) 凍結乾燥機(成澤研と共同利用)
土壌硬度をデジタルで記録! 成分分析に活躍します。 ネコチャン(ウソ

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